住まいを貸す契約の流れ

住まい(持ち家または投資物件)を貸す場合には、やらなければならないことがいくつもあります。事前に知っておくべき手続き、ポイントを紹介します。

1.不動産物件の仲介(媒介)を依頼する

個人が自己所有する物件について借主と賃貸借契約を結び、経営を行う分には宅地建物取引業には当たりませんので、宅地建物取引業免許は不要です。しかし、入居者募集から始まり、契約とそこに至るまでの諸々の書類準備や手続きをすることは、素人ではなかなか難しいことです。しかも、もしも入居後に契約内容についてトラブルが起きたりしたら、うまく対応できないことが多いでしょう。

 

そのようなことを考えると、一般的には不動産会社に物件の賃貸借取引の「仲介(媒介)」を依頼することが無難な選択となります。不動産会社は住まいの賃貸借にかかわるすべての手続きを手助けしてくれます。

2.物件の概要を正確に把握する

住まいを貸し出すには、その物件がどのようなものなのかを正しく把握した上で明示をしなければなりません。借主にとっては、住む家の情報が曖昧だったり不足していたりしたら、借りようという気にはならないものです。

 

ですから、物件の内・外部、付属施設、利用可能な交通機関、周辺の公共施設や環境といった物件概要については、詳細で正しい情報を調べてそろえていきます。住戸については正確な面積、各種付帯設備、収納の数、築年数など、付属設備は、駐車(輪)場の有無と料金、セキュリティー設備、ライフラインの設置状況などを明確にします。交通機関・周辺環境といった物件そのもの以外の情報は、候補となる入居者属性の範囲に影響するので、できるだけ便利でかつ多様性が出るように調べましょう。

3.賃料を確定する

物件の概要を把握するのと合わせて、所在エリアの家賃(賃料)相場を調べます。そして物件概要と相場を照らして貸し出す物件の家賃を決めていきます。

 

適正家賃の設定には、その物件が持つ固有の要素や相場などを加味することが必要不可欠です。ですから、そうした情報に詳しい地元の不動産会社や多くの物件の仲介を取り扱っている不動産会社に賃料の査定を依頼することは、間違いやなかなか借り手が見つからないというリスク低減につながります。

4.入居者募集要項を設定する

入居条件については、ターゲットとなる候補者属性を含めてきちんと考えなくてはなりません。

 

ただし入居条件を狭く限定すると、思ったより応募が少なかったときに募集範囲を広げることができないので、反対にデメリットとして作用してしまう可能性も十分に考える必要があります。

 

さらに、入居時の初期費用の設定で競争力を高める方法もあります。敷金や礼金を減額するほか、入居当初一定期間の家賃を不要とする「フリーレント」も効果的です。中には、月々の家賃を少し上乗せすることで、礼金・敷金ゼロとする物件も出てきています。

5.契約条件(普通借家か定期借家か)を確定する

賃貸借の契約条件について、普通借家契約にするのか定期借家契約にするのかを検討して決めましょう。

 

普通借家契約ですと、たとえ契約期間を設定しても、契約期間満了時に借主は契約更新をして住み続けることができます。

 

一方、定期借家契約ですと、貸主に正当な事由がなくても賃貸借契約期間の満了をもって契約が終了し、借主は住戸を明け渡すことになります。ただし定期借家契約でも、契約期間が1年以上の場合は借主に対して契約期間の終了についての通知義務がありますので注意が必要です。また、借主から見れば普通借家契約よりも不利な契約になりますから、一般的に定期借家の賃料は低めになります。さらに礼金などの一時金を授受する理由も希薄になるため、賃貸収入は低めになると考えられます。

6.入居資格要件の確認

入居資格要件とは、どのような人に住んでもらうかということをあれこれ考えて設定する、借主に対する条件です。これは賃貸後の家賃滞納やその他のトラブルを回避して、円滑な賃貸経営をするためには不可欠な事項です。

 

一般的に設定する要件としては、「収入」、「職業および勤務先」、「勤務形態」、「職歴」、「クレジットカード・ローンの滞納歴」などが挙げられます。この他、連帯保証人を必要とする場合は該当人物の有無が必要になります。

 

これら設定した入居資格要件は、「入居審査」を行って賃貸可否を判断します。

 

また、家賃保証会社を利用する場合は、家賃保証会社による入居審査も行われることになります。

7.借主に用意してもらう書類

賃貸借契約に際して借主に用意してもらう書類は、基本的に入居申込書に記載してもらった内容を証明するものになります。具体的には「住民票」、「本人確認書類(運転免許証、学生証など)」、「連帯保証人の承諾書」、「連帯保証人の印鑑証明書」などです。

8.賃貸借契約を締結するときのポイント

賃貸借契約の締結は、貸主が賃貸借契約書を発行し、貸主・借主双方がその内容に合意することで実行されます。つまり、基本的に賃貸借契約書に記載された内容が賃貸借契約の全てと言えます。ですから、契約書そのものは不動産会社が代行作成したものであっても、貸主はその内容を確実に理解・把握している必要があります。

 

また規定の記載項目以外の取り決めは「特約」という形で記載します。例えば更新について、更新料やその他特別な決め事をする場合、中途解約についての取り決め、退去時・原状回復に関する事柄など、法令に抵触しない範囲内で貸主が任意で定めることができるものは、慎重に検討した上で追加します。ただし、もう一方の契約当事者である借主の合意が得られなければ成立しないので、内容についてはよく考える必要があります。明らかに借主に不利な内容については、たとえ契約時に借主が合意したとしても後に無効になる可能性があります。

9.契約更新について

普通借家契約で契約期間が満了になると、次の契約期間を定めて貸主・借主の合意のもと更新手続きを行います。これを「合意更新」と言います。一方、更新手続きを行わなくとも契約を更新・継続することはできますが、その場合は「法定更新」となり、更新後の契約期間は定めのないものとなります。法定更新では従前の契約と同一条件での契約更新となります。

 

通常は契約期間を定めて、期間満了ごとに合意更新を繰り返していくべきでしょう。貸主側としては、契約更新に合わせて家賃や管理費の見直しを行いたい場合もあるでしょう。また、その他契約条件についても変更が必要になるかもしれません。さらに契約更新時に借主から「更新料」を徴収する場合もあります。これが合意更新ではなく法定更新になってしまうと、法定更新後の契約期間は定めのないものとなり従前の契約内容がずっと続くことになるので、それ以降は更新料の徴収はできなくなります。

10.退去手続きについて

入居者から解約の連絡を受けたら退去の手続きを行います。借主都合での解約申し入れは、一般的に1ヶ月前に設定されることが多いです。この期日設定については、必ず契約内容に盛り込まれるものです。あとは申し入れの方法をどうするか、解約通知書の提出を求めるのか、それに代わる手段にするのかも契約内容に明示しておきます。

 

借主から解約の申し入れがあったら、貸主はすぐにその手続きに入ります。退去日から算出した日割り家賃について、退去日の予定確認、引越し作業後の住戸内の確認について、その後の原状回復のための敷金精算についてなどを明確に説明し、退去時点でのトラブルの発生を予防しておきます。

 

精算などの連絡が後日になる場合は、移転先の住所、電話番号などを必ず聞いておきます。新たな電話番号などが決まっていないという場合は、確定後速やかに知らせてくれるように依頼します。

 

退去時は最後の金銭授受を行う場面なので、トラブルが発生しやすくなります。原状回復のための現況確認など、一般の貸主には判断が難しいものです。やはり多くの場合不動産管理会社の力を借りることになるでしょう。